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Kids Dancing performance

スペシャルインタビュー/振付師・盛合大介氏

 

第18回公演「Gift~100点満点のハッピーライフ~」
公演記念 スペシャルインタビュー

―振付師・盛合大介氏―

「大ちゃん先生!」と子供たちが笑顔で取り囲む、ひときわ目を引くレインボー柄がトレードマークの振付師、盛合大介氏。
ダンスという自己表現を通じて、子供たちに真摯に向き合い、表現する楽しさを伝えている大ちゃん先生が
Kid’s Dancing Performance(以下KDP)の子供たち、そして観客の皆さんに伝えたいこととは-?

―ミュージカルはお芝居と歌とダンスで物語を伝えていく芸術だと思うのですが、演出家から脚本が渡されてからストーリーに合わせてダンスを作りこんでいくのですか?

まずは脚本とナンバー(楽譜)を手にして、出演者やダンスの入る場所、曲や歌が入っている位置の意味などを読み解き、自分の中で“ちゃんとつながっている物語”を成立させることから始まります。そこから、ストーリー設定を鑑みてダンスを組んで、現場に持ち込むのですが…現場で初めて「こういう設定だったのか!」ということもあったりして。そこを臨機応変にグググと設定に合わせられるのが自分の持ち味だな、とも思っています笑

 

―物語や音楽を聞くことで、ダンスのインスピレーションが湧いてくるものなのですか?

ミュージカルは、“伝えたいことが明確”というのが特徴です。物語で伝えたい想いは歌詞や音調として存在しているので、それを聞くことで自然と踊りとしての表現ができるんです。それをうまく構成しながら見てくれる人の目線にも立って、飽きないように、伝わるように組み合わせています。
それから、特にダンスを作るにあたって一番影響が大きいのは楽曲です。ミュージカルの楽曲というのは歌謡曲と違って“ストーリーの中での役割があるから歌う”ものであって、伝えたい感情やシーンなどで溢れているんです。楽しい、悲しい、戦っている、などわかりやすいですよね。それに加えて、音のリズムにつながった身体の自然な動きを大切にしながらダンスを作っていっています。

 

―ダンスについて、演出家から「こうしてほしい」というリクエストもあったりするのでしょうか?

ダンスと一緒に、演者の立ち位置なども決めるステージングも担当しているので、「こんなステージにしてほしいな」「こういう芝居をしたい」というリクエストがあることも稀にありますが、どちらかというと、楽曲から演出家の意図を汲み取ることが多いですね。
なぜなら、楽曲を作るときに、作曲家が演出家からシーンのイメージやストーリー、つまり歌詞の流れなどを聞き出して音にしてくれているんです。「楽曲がここで転調しているってことは、ここで何かしてほしいのかな」「次はこういう展開になるだろうから、ステージングはこうしたほうがよさそうだな」とか。
演出家がしっかりイメージを作りこんで、それを作曲家が楽曲にして世界観を作ってくれる、そしてその世界観を汲み取って最終形態にするのが振付師です。汲み取りを失敗すると二人の意図を裏切ってしまうし、バトンタッチ、バトンタッチ、で最終アンカーとしてゴールをしっかり決めるのが仕事です。

 

―まさしく「ミュージカルは総合芸術」と言われる所以ですね。3人でバトンをつなぐ難しさもあったりするのでしょうか?

それはもちろんあります笑
もっとこうしてほしい、ああしてほしいっていうのもありますし、提示したものがいつも正しいわけではないので。3人で意見交換しながら、さらに要望が重ねられたりするんですが、私はなんでも受け入れ態勢バツグンなので「そこはちょっとさ」っていうこと以外は基本的には全部ハイッって全部言います笑 ああ、そうなんすね、って笑
ちょっと違うかな?と思っても、幅広く受け入れて、まずは作ってみて。で、「これだとおかしくなっちゃうんで違うパターンも用意しておきました」と提案したりして作り上げていっています。

 

―ミュージカルの演者が子供たち、というところにも難しさもありますか?

やぱりポジショニングなどは大変そうだな、と思いますが、キッズの子供たちは先輩たちがうまく導いてくれていますね。振付師としては「音を聞きながら、歌いながら、自然と体が動くわかりやすく伝わりやすい振り付け」を大事にしています。音がツトトトトン、なら、体もそうしたほうがよくて。ただのカウントでの振り付けをしてしまうと、雰囲気もずれてしまうんです。「音を聞いていればいいよ、聞こえたまま動けばいいから。歌を歌ったままで体を動かせばそのまま振り付けになるから」と伝えています。そうすると、自然にダンスがそろっていくんです。

 

―先生のレッスンが楽しくてしょうがない、ダンスが得意でなくても自然と「できちゃった気がする」という声も聞こえてきます。

「できちゃった気がする」というのが大事ですよね。
振りが覚えられなかったというのはちょっと悔しいけど、できなくても、かっこ悪くても、何が一番かっこいいかなんて知らなくても、楽しく踊れていればそれが正解だと思います。かっこよくなかったり、うまくなかったりしたらダンスじゃないっていうのは心が苦しい。自由に、へたくそでも歌ったり、踊ったりすれば楽しいよね、というマインドが素敵な感情、素敵な表現につながっていくと思っています。

 

―今回の舞台は小田原三の丸ホールという物理的に大きな舞台ですが、ステージング全体に与える影響はありましたか?見どころはどんなところでしょうか?
KDPの演者は人数が多いので、ステージを大きくしてほしくて仕方がなかったからとてもうれしく思っています。大きく動いたり、移動したりダイナミックな表現ができる。だからこそ、戦いは見ごたえがあると思います。
一人一人をしっかり見て、それぞれがどのようなダンス表現をしているか、という点を見るのも楽しみ方の一つ。作品全体を通して全体像を見ても、その中の一つ一つの歌と踊りを切り取って見ても、きっと面白いものを見ていただけます。
個々を見て、全体を見て―なので、3回見るしかないですね笑

 

―ついつい、「見なきゃ」「考えなきゃ」っていう気持ちになりがちなのですが…

個人的には、ミュージカルはお客様が“一生懸命”見るものではなくて、だた見てるだけでも楽しい作品、楽しいステージング、楽しい歌、楽しいダンスであるべき、と思っています。ミュージカルの物語を追うことも必要ではありますが、楽しそうなナンバーはシンプルに楽しさを感じていただきたいです。何もしなくても見ていても楽しい、というのが理想ですし、子供たちがそうしてくれると信じています。

 

―お客様にメッセージはありますか?
KDPの子供たちはまだまだ成長途中です。ですが、表現したい魂は本物。
ぜひその「未完成の全力」を楽しんでいただけると嬉しいです。

  

プロフィール

盛合 大介/振付・ダンス指導

ダンサーとして「劇団四季」「ディズニーリゾート」「東宝ミュージカル」など多数出演。また、Kinki Kid‘s堂本光一氏のバックダンサーを務めるなど、幅広く活躍。現在は「もりもりふぁみりーミュージカルスタジオ」を主宰。基礎力強化に重きを置いたダンス指導を得意とし、「楽しい人生」をモットーにダンスの楽しさ、ミュージカルの楽しさを伝えている。