back to top
  /    /  4月

4月 2022

  第18回公演「Gift~100点満点のハッピーライフ~」 公演記念 スペシャルインタビュー ―振付師・盛合大介氏― 「大ちゃん先生!」と子供たちが笑顔で取り囲む、ひときわ目を引くレインボー柄がトレードマークの振付師、盛合大介氏。 ダンスという自己表現を通じて、子供たちに真摯に向き合い、表現する楽しさを伝えている大ちゃん先生が Kid's Dancing Performance(以下KDP)の子供たち、そして観客の皆さんに伝えたいこととは-? ―ミュージカルはお芝居と歌とダンスで物語を伝えていく芸術だと思うのですが、演出家から脚本が渡されてからストーリーに合わせてダンスを作りこんでいくのですか? まずは脚本とナンバー(楽譜)を手にして、出演者やダンスの入る場所、曲や歌が入っている位置の意味などを読み解き、自分の中で“ちゃんとつながっている物語”を成立させることから始まります。そこから、ストーリー設定を鑑みてダンスを組んで、現場に持ち込むのですが…現場で初めて「こういう設定だったのか!」ということもあったりして。そこを臨機応変にグググと設定に合わせられるのが自分の持ち味だな、とも思っています笑   ―物語や音楽を聞くことで、ダンスのインスピレーションが湧いてくるものなのですか? ミュージカルは、“伝えたいことが明確”というのが特徴です。物語で伝えたい想いは歌詞や音調として存在しているので、それを聞くことで自然と踊りとしての表現ができるんです。それをうまく構成しながら見てくれる人の目線にも立って、飽きないように、伝わるように組み合わせています。 それから、特にダンスを作るにあたって一番影響が大きいのは楽曲です。ミュージカルの楽曲というのは歌謡曲と違って“ストーリーの中での役割があるから歌う”ものであって、伝えたい感情やシーンなどで溢れているんです。楽しい、悲しい、戦っている、などわかりやすいですよね。それに加えて、音のリズムにつながった身体の自然な動きを大切にしながらダンスを作っていっています。   ―ダンスについて、演出家から「こうしてほしい」というリクエストもあったりするのでしょうか? ダンスと一緒に、演者の立ち位置なども決めるステージングも担当しているので、「こんなステージにしてほしいな」「こういう芝居をしたい」というリクエストがあることも稀にありますが、どちらかというと、楽曲から演出家の意図を汲み取ることが多いですね。 なぜなら、楽曲を作るときに、作曲家が演出家からシーンのイメージやストーリー、つまり歌詞の流れなどを聞き出して音にしてくれているんです。「楽曲がここで転調しているってことは、ここで何かしてほしいのかな」「次はこういう展開になるだろうから、ステージングはこうしたほうがよさそうだな」とか。 演出家がしっかりイメージを作りこんで、それを作曲家が楽曲にして世界観を作ってくれる、そしてその世界観を汲み取って最終形態にするのが振付師です。汲み取りを失敗すると二人の意図を裏切ってしまうし、バトンタッチ、バトンタッチ、で最終アンカーとしてゴールをしっかり決めるのが仕事です。   ―まさしく「ミュージカルは総合芸術」と言われる所以ですね。3人でバトンをつなぐ難しさもあったりするのでしょうか? それはもちろんあります笑 もっとこうしてほしい、ああしてほしいっていうのもありますし、提示したものがいつも正しいわけではないので。3人で意見交換しながら、さらに要望が重ねられたりするんですが、私はなんでも受け入れ態勢バツグンなので「そこはちょっとさ」っていうこと以外は基本的には全部ハイッって全部言います笑 ああ、そうなんすね、って笑 ちょっと違うかな?と思っても、幅広く受け入れて、まずは作ってみて。で、「これだとおかしくなっちゃうんで違うパターンも用意しておきました」と提案したりして作り上げていっています。   ―ミュージカルの演者が子供たち、というところにも難しさもありますか? やぱりポジショニングなどは大変そうだな、と思いますが、キッズの子供たちは先輩たちがうまく導いてくれていますね。振付師としては「音を聞きながら、歌いながら、自然と体が動くわかりやすく伝わりやすい振り付け」を大事にしています。音がツトトトトン、なら、体もそうしたほうがよくて。ただのカウントでの振り付けをしてしまうと、雰囲気もずれてしまうんです。「音を聞いていればいいよ、聞こえたまま動けばいいから。歌を歌ったままで体を動かせばそのまま振り付けになるから」と伝えています。そうすると、自然にダンスがそろっていくんです。   ―先生のレッスンが楽しくてしょうがない、ダンスが得意でなくても自然と「できちゃった気がする」という声も聞こえてきます。 「できちゃった気がする」というのが大事ですよね。 振りが覚えられなかったというのはちょっと悔しいけど、できなくても、かっこ悪くても、何が一番かっこいいかなんて知らなくても、楽しく踊れていればそれが正解だと思います。かっこよくなかったり、うまくなかったりしたらダンスじゃないっていうのは心が苦しい。自由に、へたくそでも歌ったり、踊ったりすれば楽しいよね、というマインドが素敵な感情、素敵な表現につながっていくと思っています。   ―今回の舞台は小田原三の丸ホールという物理的に大きな舞台ですが、ステージング全体に与える影響はありましたか?見どころはどんなところでしょうか? KDPの演者は人数が多いので、ステージを大きくしてほしくて仕方がなかったからとてもうれしく思っています。大きく動いたり、移動したりダイナミックな表現ができる。だからこそ、戦いは見ごたえがあると思います。 一人一人をしっかり見て、それぞれがどのようなダンス表現をしているか、という点を見るのも楽しみ方の一つ。作品全体を通して全体像を見ても、その中の一つ一つの歌と踊りを切り取って見ても、きっと面白いものを見ていただけます。 個々を見て、全体を見て―なので、3回見るしかないですね笑   ―ついつい、「見なきゃ」「考えなきゃ」っていう気持ちになりがちなのですが… 個人的には、ミュージカルはお客様が“一生懸命”見るものではなくて、だた見てるだけでも楽しい作品、楽しいステージング、楽しい歌、楽しいダンスであるべき、と思っています。ミュージカルの物語を追うことも必要ではありますが、楽しそうなナンバーはシンプルに楽しさを感じていただきたいです。何もしなくても見ていても楽しい、というのが理想ですし、子供たちがそうしてくれると信じています。   ―お客様にメッセージはありますか? KDPの子供たちはまだまだ成長途中です。ですが、表現したい魂は本物。 ぜひその「未完成の全力」を楽しんでいただけると嬉しいです。    プロフィール 盛合 大介/振付・ダンス指導 ダンサーとして「劇団四季」「ディズニーリゾート」「東宝ミュージカル」など多数出演。また、Kinki Kid‘s堂本光一氏のバックダンサーを務めるなど、幅広く活躍。現在は「もりもりふぁみりーミュージカルスタジオ」を主宰。基礎力強化に重きを置いたダンス指導を得意とし、「楽しい人生」をモットーにダンスの楽しさ、ミュージカルの楽しさを伝えている。

第18回公演「Gift~100点満点のハッピーライフ~」 公演記念 スペシャルインタビュー ―作曲家・三竹詩乃氏― 大きな笑顔と、歌声、ハスキーボイスの持ち主、「しのちゃん先生」こと三竹詩乃さん。 Kid's Dancing Performance(以下KDP)の公演に欠かすことのできない、楽曲を創っています。 本公演の楽曲づくり、そしてKDPに寄せる思いを熱く語ってくれたインタビューです。 作曲家・三竹詩乃 Shino Mitake ―本作「Gift―100点満点のハッピーライフ―」は他の作品に比べて楽曲が多いのが特徴ですね。楽曲づくりで大変だったことはあるのでしょうか? 「ミュージカル」は英語で書くと「music」に「al」をつけた芸術なので、ミュージカルにおける楽曲というのはとても大切な役割を担っていて、海外では演出家よりも先に作曲家の名前が(パンフレットに)載ることもあるくらいなんです。その楽曲を担当していると思うと、今回だけでなく毎回「想いに応えたい」という気持ちからプレッシャーを感じますね。幸せで、重圧を感じるとかではないけれど、早く終わりたいという―出産と同じような感覚です笑 作曲においては、何よりも「子どもたちが歌って、そしてそれはお客様にどう響くのか」ということを一番大切にしています。作曲家が「素晴らしい曲を作りたい」とエゴを出すのではなく、私たちの仕事は3割、あとの7割は子どもたちが舞台で昇華させるもの、と思っています。   ―楽曲制作において大変なことはどんなことなのでしょうか? メロディーラインを作ることは案外できてしまうんですが、ホールや舞台のサイズに合わせて曲自体に装飾をする「アレンジ」が大変です。もともと作曲を専門にしていないので、幼少期に父が聞いていた大音量のオーケストラや学生時代の吹奏楽部での経験から、「ブラスがこう入るといいな」「ベースがここで入って、弦楽器がここだな」という見当をつけて、作曲ソフトであらゆる楽器から楽曲に合った音選びやアレンジをするのですが、それに多くの時間を割きます。 6年前かな?にみっちゃん先生に「ミュージカル一緒にやらない?」と声をかけてもらって、一作すべて作曲してみたのですが、初めての作品によくあることで、振り返るととても幼稚で(笑)同作を大きなホールで再演する、というときに作曲ソフトを購入し直して、アレンジも大幅に変更したことがあります。 今年は初めて、楽曲をあえて「完成」させずに現場に持っていき、「今まだ30%くらい、もっと派手になるよ」などと言いながら子どもたちから意見を聞いて完成形まで近づける、という過程にもトライしてみました。もともと100%完成形で持っていくことは少ないのですが、今年は特にその工程が多かったように思います。「音がこうだから、なにかいい言葉ない?」と相談したりして。その過程で「自分だったらこう言いたい」と思って生まれたセリフは、舞台の上でも輝くと思ったんです。   ―舞台に立つのが子どもたちである、というのも楽曲制作の際に影響はありますか?楽曲制作の時にポイントになるのはどのような点なのでしょうか? もちろんあります。舞台に参加するメンバーによって年齢の高低が異なり、その結果、歌になる声の性質も違ってくるので。楽曲制作のポイントとしては、観劇してくださるお客様が初めて聞いて覚えやすいように、ポップでキャッチーであることも大切にしています。「このメロディは耳に残るだろうな」という楽曲を変調して、色々なシーンの背景に流すためにアレンジしています。決して手抜きじゃないですよ笑 意外かもしれませんが、映画やドラマでもBGMは大半のシーンで流れていて。音の効果を活用してセリフを乗せることで、セリフの意味を最大限に発揮することができるんです。子どもたちは音楽に合わせてセリフを発しなければいけないので、とても大変だと思うのですが…。     ―今回は小田原三の丸ホールという大きな舞台ですが、楽曲制作の際に影響はあったのでしょうか? すごくありました!笑 そもそもまったく新しい脚本に楽曲をつけることが4年ぶり、そしてその上に小田原三の丸ホールという大舞台。舞台が大きいと、楽曲も深みを出さねばならず、アレンジがとても大変でした。300人の方に伝わる楽曲と、1,000人の方の2階席まで伝わる楽曲では制作の深さが大きく異なります。音楽も、歌も、振りも、ダンスも、すべてをより遠くまで届けなければならない、という恐ろしいことなんです。それは単純に音量だけの話ではなく、「伝えるエネルギー」がより必要、ということ。私も劇団で全国ツアーをしたことがあるのですが、会場の違いによって「蛇腹合わせ」をするんです。会場の大小に合わせて、適切なエネルギーを届けるための調整なんですが、それに慣れていない子どもたちにとっては大きな壁、チャレンジだと思います。セリフが聞こえない、歌が届かない、となるとすごくもったいないですよね。でも、すごくシンプルに「きっとこの大きな舞台に立つのってワクワクするだろうな」って思うんです。だからみんなで頑張りたいと思っています笑   ―そんな舞台での本作ですが、作曲家として一番の見どころはどのシーンでしょうか? パッと思い浮かんだのは、小さな人形たちが歌う「元気を出して」というナンバーのシーンです。 本作では「心のギフト」という曲がもともとの脚本のテーマソングなのですが、脚本を受け取ってから私が最初に作曲したのは実はこの「元気を出して」で。個人的にはこのナンバーがテーマソングだと思っているんです。この世の中で、小さな人形たちが歌うこの曲には「何も武器を持たない強さ」があって、込められたメッセージはきっと大人の方の心にも残る。一番伝えたいことが詰まっている曲なんです。 それから、ロッティーとジャックが歌う「二人の世界」。ファンタジーの幕開けにふさわしいワクワク感のある楽曲なのですが、作曲した時の「こうなるだろうな」っていう想像を超えてくる。そんな素晴らしいことは他にないですよね。 そして、2か月以上悩んだのは冒頭の泥棒一家のシーンです。ミュージカルでも珍しい長時間の芝居の後に楽曲が来るのですが、そこで舞台に引き込まれる楽曲とは?と悩みに悩んで、複数曲を作って。振付の大ちゃん先生は楽曲をよく聞いて振りをつけてくれてとても感謝しているのですが、こんなに振りがつくと歌が歌えなくなる!など、大ちゃん先生とも戦った一曲です笑   ―楽曲やダンス、ストーリーによって本番はいろいろな感情が押し寄せてくると思います。お客様にはどんなことを感じていただきたいですか? とにかく、楽しんでください、というのは大前提として。生身の芸術に触れることが難しくなってしまった時代だからこそ、子どもたちの“一生懸命のエネルギー”を全身で浴びていただきたいですね。子どもたちも、大人たちも、こんなに熱く一つの方向に向かえる芸術は他にないですから。     プロフィール 三竹 詩乃 Shino Mitake/作曲 幼少期より、バトントワリング、ピアノ、トランペットを学び、専門学校のミュージカルコースを卒業。のちにスイセイミュージカルに入団し、全国各地で公演、メインキャストを務める。 退団後はミュージカルスクール講師として全国の子供たちの市民ミュージカルの指導を重ねる。 現在は東京ビジュアルアーツ、芸能事務所ゼロプロジェクト、小田原キッズダンシィングパフォーマンスにてボーカル指導、オリジナルミュージカルの作曲、歌唱指導をしている。ミュージカルスタジオビートの代表として作曲、演出も手がけている。

公演情報解禁しました!! 2022年4月30日(土)・5月1日(日) 小田原三の丸ホール 大ホールにて上演いたします!             Produce 脚本・作詞・演出 蔦木 美津子 作曲・音楽    三竹 詩乃 振付       盛合 大介   Cast 〈Kid's Dancing Performance〉 天野 想彩 / 天野 那由多 / 安藤 千世 / 飯塚 心玲 / 石田 美玖 / 稲木 美心 / 小澤 安奈 / 柏木 あさ陽 / 加藤 博子 / 上髙原 想央 / 上髙原 充基 / 木村 美音